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橈骨神経麻痺

2022.03.08 | Category: 未分類

このたびはセドナ整骨院・鍼灸院公津の杜院のブログへお越し頂きありがとうございます。

今回は橈骨(とうこつ)神経麻痺に関しての医療情報と対策に関してのブログを纏めました。少し難しい内容も含まれるかと思いますが、皆様のお悩みに解決に少しでもお役にたてると幸いです。

 

「朝起きたら手が冷たい!動かない!しびれていた!」なんて経験は大小あるかと思いますが、その正式名称の多くが橈骨神経麻痺と呼ばれるものです。

患者さんの中には一般で言うところの不定愁訴、例えば痺れや虚脱感、違和感を訴えてくる患者さんが多いです。前提として人間の運動は常に脳で制御されて電気信号が運動が起こります。

しかし稀に末梢神経(脳・脊髄以外)で絞扼が起こると「しびれ感」「異常知覚」「感覚異常」「違和感」などの神経症状を起こすことがあります。

この橈骨神経麻痺は絞扼性神経障害(挟み込まれて起こる神経障害):Entrapment Neuropathyに属します。

 

橈骨神経麻痺について細かく解説をしていきます。

痺れの疫学

・東京都目黒区の三宿病院神経内科を1995~1998年までの3年間に「しびれ」を主訴として来院した患者の分析(神津 仁:しびれの診方 臨床疫学と鑑別診断.JIM,16(9) 706−711, 2006)

・部位別:末梢神経障害68%、脊髄障害17%、中枢神経障害9%、原因不明6%
・末梢神経障害:外傷性/絞扼性障害49%、代謝性障害33%、感染または炎症5.9%、栄養障害/アルコール性1.7%、中毒性/薬剤性1.5%、遺伝性0.8%、その他8.1%、
・外傷性/絞扼性障害:手根管症候群61%、肘部管症候群19%、橈骨神経麻痺6%

 

橈骨神経の解剖

頚椎5番から胸椎1番から出た脊髄神経の神経根は「腕神経叢(わんしんけいそう)」と呼ばれる神経の束を形成します。
撓骨神経はこの腕神経叢の後神経束という束から起こり、頚部付近の生理的狭窄部を抜けながら脇の下にある大円筋の下を通過します。

そのまま上腕骨の後ろにある撓骨神経溝に沿って手に方へ走りつつ、上腕三頭筋へ枝を出し、上腕では3つの皮神経(後上腕皮神経、下外側上腕皮神経、後前腕皮神経)も分枝します。

撓骨神経溝を下行した撓骨神経は上腕骨の外側上顆の前方を通り、前腕へ向います前腕上部で浅枝と深枝に分かれます。
浅枝と呼ばれる分枝は腕撓骨筋の深部を下行し、前腕伸筋群に運動神経を出しながら最終的には手の皮膚に分布します。

深枝は回外筋を貫通し、その後は「後骨間神経」と呼ばれます。

分岐

腕神経叢(C5-T1) → 後神経束 → 撓骨神経(C5-C7)

(上腕部)
→ 上腕三頭筋への筋枝
→ 皮神経(後上腕皮神経、下外側上腕皮神経、後前腕皮神経)

(前腕部)
→ 浅枝
→ 深枝 → 後骨間神経

 

橈骨神経麻痺の原因

橈骨神経には上腕骨を付近では本管、その後肘関節より遠位で、知覚枝と運動枝(後骨間神経)に分岐して存在。

橈骨神経は大円筋の下(クワドリラテラルスペースの下の別スペース)から分枝し、上腕骨骨幹部を外方に斜走。
本管の損傷は上腕骨骨幹部や過剰骨折での骨折で発生が多く、後骨間神経の損傷は橈骨頭の骨折や脱臼などに併発してくる事が多い。

一番多い原因としては圧迫損傷です。

これはハネムーン症候群、サタディナイト症候群などと呼ばれることがあります。
(ハネムーンで腕枕をして、土曜日の夜に腕枕をして朝起きたら上肢に力がはいらない男性が多いというのがこの名前の由来だそうです)

また臨床上多いのは自分の体の下に腕が入った状態で寝ていた、また電車で壁に寄りかかるように寝ていてなど睡眠時に好発し、その時間は最短で30分程度から発症することが多いそうです。

そのほかには骨折の合併症やガングリオン、脂肪腫などの軟部腫瘍による圧迫などがあるそうですが、これに関してはMRIや超音波による画像診断で確定が出せます。

 

橈骨神経麻痺の特徴

特徴として運動神経の障害がメインになってきます。
具体的に言うと、手・指の伸展不可、握力低下があげられ、また知覚神経は特に第1~3指の背側に発生します。

特徴的変形な変形として手首から全体的に掌側におちるような「下垂手」が特徴的な変化として挙げられます。

 

橈骨神経麻痺と後骨間神経麻痺

橈骨神経麻痺と混同されやすいものに後骨間神経麻痺があげられます。
臨床上は治療のポイント、内容が変わるので鑑別としても非常に大切ですのであげておきます。

◇後骨間神経麻痺の特徴◇

橈骨神経の低位麻痺であり橈骨神経深枝である後骨間神経が回外筋浅頭腱弓(フローセ腱弓、Frohse arcade)部などで絞扼されて発生する運動障害です。
(回外筋は約3割は繊維性のアーケードとなっていて絞扼を発生させやすい部位といえます)

ここで後骨間神経麻痺についても触れていきます。

後骨間神経麻痺の原因

・前腕部への機械的圧迫刺激→橈骨神経麻痺と同様、前腕を下にした状態で睡眠してしまった場合 etc
・橈骨頭による圧迫→橈骨頭前方脱臼、モンテギア骨折などで発生します。
・前腕の過度使用によるフローセ腱弓での絞扼→ドライバー、ハサミの過度使用 etc
・ガングリオン、脂肪腫などによる軟部腫瘍での圧迫

後骨間神経麻痺の特徴として運動神経は障害されることが多いので特徴としては手関節橈側背屈可能となります。

そして知覚神経の機能は残存します。痺れや違和感、左右差を訴える場合は別の何かの病態を併発していると考えるのが適当かもしれません。
特徴的変形としては下垂指と呼ばれ「指だけが掌側に落ちてしまう状態」となります。

前述した両者には特徴的な症状がいくつかありますのでまとめてみようと思います。この二つは似たような症状を呈しますが、治療のポイントが大きく変わります。
大きく分けて検査は手指の伸展ができるかどうかが重要な指標の一つです。

なぜならば、運動枝である後骨間神経に分岐する前に長橈側手根伸筋には本管より運動枝が出ているため手関節、指関節共に背屈運動は不可能になります(下垂手)

逆に後骨間神経麻痺では軽度の手関節の伸展が可能となってくる。手指背屈の筋は純粋に後骨間神経に分かれてからの運動枝である為、橈骨神経麻痺が発生すると手指の伸展が不能となるが、後骨間神経への分枝前に運動枝を出される橈骨手根伸筋の運動は可能である為、手関節は伸展する事ができる(実際には橈側が上にくるように伸展されていく)これを「下垂指」と呼びます。

日本整形外科学会のHPでは以下のように分類・定義されています。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/radial_nerve_palsy.html

下垂手(drop hand)

手首の背屈と手指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が伸ばせなくなくなります(伸展不能)。

手首と指が下がった状態になるので、こう呼ばれます。第1関節(DIPとIP)と第2関節(PIP)は伸展可能です。

下垂指(drop finger)

手首の背屈は可能ですが、手指の付け根の関節の伸展ができなくなります。指のみが下がった状態になるので、下垂指と呼ばれます。後骨間神経という運動神経のみが傷害された場合は感覚の異常はありません。

神経麻痺ってどんな状態?

ではこの時の体、つまり末梢神経ではどのような病態が発生している。さわり程度になりますが説明していきたいと思います。
圧迫・座滅などで損傷を受けた神経は大きく分けて3つの病体に分類できます。今回みた橈骨神経麻痺と後骨間神経麻痺も基本的な神経損傷の過程は同じです。

有名なものにseddonの三分類があります。

《Seddonの分類》 ※

Neurapraxia(一過性神経伝導障害、神経ブロック)

軸索は温存されていますが脱髄により神経の伝導が脱髄部でブロックされてしまい、それより末梢に伝導されない状態です。

手で頭を支えてテレビを見ていて手がしびれてうまく動かなくなってしまったり、正座していたり足を組んでいたりして足がしびれたりうまく動かなくなってしまったということは皆さんにも経験があるかと思います。これがNeurapraxiaの状態です。

少し時間が経過すれば直ります。一過性の神経障害で脱髄が回復すれば改善します。末梢神経の回復は中枢から徐々に末梢に向かって改善しますが、Neurapraxiaは障害部での伝導ブロックですので、その部が回復すれば全ての機能が一様に改善します。

Axonotmesis(軸索断裂)

軸索が断裂してしまいその部位より末梢に伝導されなくなります。これはNeurapraxiaと同じですが病態が異なります。

断裂部より末梢の軸索はWallar変性してしまうということです。しかし、神経幹の連続性がありますので圧迫などの原因が取り除かれれば回復が望めます。ただし手放しには喜べません。

脱神経の状態が長期に及ぶと萎縮した筋の機能の改善を得ることは出来ません。骨間筋の萎縮が著明な肘部管症候群で術後の筋機能の回復が得られなかった例を経験したことはあるものと思います。

また、手根管症候群でも同様で短母指外転筋の改善が見込まれないから母指対立機能の再建が必要となります。 Axonotmesisは手根管症候群や肘部管症候群などの絞扼性神経障害が当てはまります。神経への圧迫により脱髄が生じ、その後、軸索断裂へ移行していきます。

そのため、早期発見早期治療が必要となります。絞扼性神経障害の末期の状態が神経幹内の軸索が100%Axonotmesisの状態にあります。

Neurotmesis(神経断裂)

外傷により神経が断裂してしまいますので診断は容易です。初診医が神経の連続性を確認しないまま皮膚だけ縫合してしまう例もありますが感覚検査やMMT、電気生理学的検査で連続性の有無を推測していく必要があります。

参照:PTOT国家試験対策ブログ  https://kigyou-pt.hatenablog.jp/entry/seddon

橈骨神経麻痺と固定

橈骨神経麻痺で多く用いられるコックアップ固定は固定であって固定ではないと感じます。コックアップ固定とは手首を中心に背屈(手の甲側に上げるような形)で行う事を指します。

その固定の意義は神経血管の直径の保護になります、完全に関節部を固定するのではなく、患者には患部を出来る限り動かさせるのがポイントです。それにより血流の増加を促します。つまり完全固定ではなく動かす事も視野に入れた固定とサポートの中間のようなイメージが好ましいと感じます。

 

橈骨神経、後骨間神経に限らず抹消神経は外側から「神経上膜」→「神経周膜」→「神経内膜」というような構造をしている。

「神経上膜」の外側からは、正式な名称ではないですが、神経栄養血管が周囲の毛細血管より派生しており、神経上膜を貫いている。神経栄養血管は神経上膜、周膜、内膜と内側へ走行しその過程、末梢部(神経繊維)まで血液供給・代謝を行っています。

例えば、神経損傷が発生し、後骨間神経麻痺のように下垂指をていした場合→前腕伸筋群は牽引される→筋組織の伸張が発生すると同時に前腕内の細動脈・毛細血管も同時に伸張される。
ゴムホースのように伸ばされた血管の直径は狭まり、中を通過する血液の供給は低下する。

この低下を起こさない為にも理学療法としての良肢位を保つためコックアップスプリントを代表する装具を必要としてきます。
しかし、良肢位に保つのも重要ですが、それと同時並行し重要になるのが血液の供給量をいかに増やしていくかという事でもあります。

当院での橈骨神経麻痺の治療

◇整体

神経伝達、神経の上位での分岐を考え頚部、肩部、上腕部、肘部全ての施術を行います。特に頚部は自律神経の調整にとってもとても大切な部位になりますので重要視致します。

◇鍼灸

当該の筋肉(回外筋など)と神経への血流改善の施術がメインになってきます。具体的な方法として神経沿いに鍼を刺入しその上からパルスと呼ばれる微弱な電気を加えて軽度の筋収縮を起こします。

特に橈骨神経の障害により機能不全に陥った手首を背屈する筋肉を重点的に行います(また手首の背屈が軽度に起こるのは目視で確認して頂きます。この方が治療効果が非常に高まります)

◇固定・サポート

・手首が背屈方向もしくは0度までに持っていけよるように固定とサポートを行います。また日常生活から背屈位(コックアップ位)を取れるように指導させて頂きます。

例えば、机の上に腕を置いたのであれば手首が背屈するように手掌部に何かを入れて背屈のポジションが強制されるようにします。夜間就寝時には必要に講じてテーピングをご自宅で行って頂き、一日も早い回復を目指します。

 

今回の内容が少しでも皆様のお力に成れると幸いです。

参照、参考文献

・医学事始
http://igakukotohajime.com/2020/09/21/%E6%A9%88%E9%AA%A8%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E9%BA%BB%E7%97%BA-
radial-nerve-palsy/
・痛みの鎮痛の基礎知識
http://plaza.umin.ac.jp/~beehappy/analgesia/react-nervinj.html
・柔道整復学・理論編:改訂第5版 P80.81
・末梢神経の臨床診断・治療・リハビリテーション:医歯薬出版株式会社
・末梢神経と筋のみかた (ビジュアルガイド):診断と治療社
・高位橈骨神経麻痺例に対する理学療法:理学療法学 第24巻第4号 255〜260頁


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