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東洋医学と陰陽五行思想について

2020.12.08 | Category: 鍼灸

意外と身近にある東洋の哲学

東洋医学はエビデンス医学と言われる西洋医学と違い、陰陽五行思想という東洋哲理を人体にあてはめたものです。

「東洋医学ってエビデンスがないでしょう?」と言われてしまうのは、東洋医学はエビデンスを元にしているのではなく、宇宙の森羅万象の真理、哲学を人体にもあてはめたものであるからで、医学という名前でありながら元々は思想、哲学から成り立っているからです。

この陰陽五行思想は医学のみならず方位や暦、易学とも密接につながっています。

日本の人々は江戸時代まで陰陽五行思想を中心に生活をしていました。

「四六時中」という言葉がありますが、この言葉は江戸時代まで「二六時中」であったと言われています。

これは2×6=12、十二支で時間を表していた事から来る言葉です。

今年は子(ね)年、来年は丑(うし)年ですが、十二支は年を表すだけでなく、時間や方位も表していました。

例えば正午とは正(まさに)午(うまの)刻、今でも昼の十二時を「正午」と言いますね、この午の刻より前を午前、午の刻より後を午後と言う表現からもわかるように、十二支を時間の表現に使っていた名残が言葉に残っています。

地球儀を南北に切った線を「子午線」(しごせん)と言いますが、これも十二支で方角を表していた事から来ています。子(真北)の方角と午(真南)の方角をつないだ線を子午線と言うわけです。

時間や方位や暦、ここまで日本人の生活に密着していた陰陽五行思想ですが、現代の私達は西洋暦を使い、西洋数字の時間を使い、今では身近な存在ではなくなってしまいました。

私達現代人は明治維新で全てを西洋化したその先の時間を生きているからなのですが、ではこの哲学、陰陽五行思想は間違っているから、必要ないから切り捨てられてしまったのでしょうか?

個人的な意見ですがそうではないと感じます。

明治維新以来日本では一気に西洋化が進み、大戦の敗戦がそれに拍車をかけました。日本古来の文化は素晴らしい文化であったはずなのに敗戦によって自信も失ってしまったのだと思います。

ですが近年ではその行き過ぎた西洋化の悪い影響も出てきています。

今こそ日本人は、先人の方々がこの土地で1000年以上もの間大事にしてきた陰陽五行思想について、改めて大切にする時期ではないかと思います。

あらためてこの場をお借りして私達が行っている東洋医学と陰陽五行思想について説明させていただきます。

陰陽五行と今ではセットで表現しますが、これは元々別の理論で、先に「陰陽論」が成立し、その後に「五行論」に発展していったと言われています。

陰陽論

陰陽論は紀元前の中国で発生したと言われています。古代の人々は川の流れを龍に例えました。この龍は流域に肥沃の大地をもたらし、この川のおかげで人々の生活が成り立っていました。その反面、ひとたび大雨が降ると流域を水浸しにし、まさに龍が暴れるかのように人の生活を破壊する恐ろしい面を見せる。日頃は恩恵をもたらしてくれる川も恐ろしい顔を持っている。この事から古代の人は「物事は全て陰陽である」、すなわち全ての物事には「陰」「陽」があり、陰と陽は相反しながら、一方がなければもう一方も存在し得ない、宇宙の森羅万象は相反する陰陽によって消長盛衰している、と定義しました。

陰陽と言えばおなじみの「陰陽太極図」ですが、これは陰極まれば転じて陽となり、陽極まれば転じて陰となる、また陰の中にも陽があり、陽の中にも陰がある、陰陽のイメージを図にしたものです。

人間という存在も正に陰陽であり、何故なら男・女という相反する性質が存在しますね。陰陽を男女に例えると、男性が陽で女性が陰になりますが、確かに男性の中にも女性ホルモンが、女性の中にも男性ホルモンが存在する事を鑑みると、紀元前当時の医学では「ホルモン」などという物質の存在は判明していなかったはずですが、宇宙の森羅万象である陰陽論を人体にまで当てはめた感覚の的確さに驚きます。

一日の中にも陰陽があります。日が昇り(陽)、そして日が沈むと今度は月が昇ってくる(陰)、一日の中にも陰陽があり、そして人間も夜になると自然と副交感神経が優位になり休息に備えます。朝目覚めると交感神経が働き活動に備える。まるで自然界の陰陽、一日の陰陽の流れに呼応するかのように、人間の身体も交感神経→副交感神経→交感神経→副交感神経・・・と陰陽に対応している。まさに大宇宙の流れに対して、人体も小宇宙であると定義したのが東洋医学です。

当時はもちろん交感神経・副交感神経などという言葉や考え方はなかったでしょうが、近代医学の発展が東洋医学の哲学の正しさを証明しているかのように感じるのは私だけでしょうか?

五行論は陰陽論よりだいぶ後になって発達したと言われています。

五行論

陰陽の二極では表し切れないものを木・火・土・金・水の五元素に分けたものが五行論です。

(もっかどこんすい)または(もっかどきんすい)(もっかどごごんすい)とも読みます。

「木」が燃えて「火」を生じ、「火」が燃えつきると「土」になり、「土」が固まると「金」が生まれ、「金」が冷えると外側に「水」を生じ、「水」が「木」を育てる、また「木」が燃えて・・・これが永遠に循環していく。

この相手を生じる関係を「相生」(そうせい)の関係と表現します。

一方で「木」は「土」の養分を吸い取ってしまい、「火」は「金」を溶かしてしまい、「土」は「水」の勢いを止めてしまい、「金」は「木」を切ってしまい、「水」は「火」の勢いを止めてしまう、この相手を剋する関係を「相剋」(そうこく)の関係と表現します。

五行説が「木」から始まっているのはとても重要で、どうも天体と関係が深いようです。確かに木星・火星・土星・金星・水星・・・星の名前と同じですね。これらは惑わす星=「惑星」と言いますが、そもそも惑星とは恒星と違い、地上から見える周期が不規則な故に人を惑わせる星という意味でつけられた名前だそうです。

古代の人は、周期こそ違いますが、木星の周が地球の周と同じ円を描いている事をつかんでいました。

木星の事を「歳星」(さいせい)と呼び、木星が12年で天を一周する事から、周天を12等分したどこに歳星(木星)が来るかによって,十二に割り当てられた場所、地上の国々の命運が占われたのが五行説の起源だとも言われています。

要するに陰陽五行論とは陰と陽である太陽と月、そして五つの惑星による天体、占星術とは切っても切り離せない関係にありました。

この木火土金水を暦に当てはめ、時刻にあてはめ、季節や方位に当てはめたものが以下の図です。

そして何とこの五行論は人体の中にも当てはまりますね、という考え方をしたのが東洋医学の起源だと言われています。

肝・腎・脾・肺・腎の事を五臓六腑の「五臓」と言いますが、それぞれ木=肝、火=心、土=脾、金=肺、水=腎と、五臓が五行に対応していますね、と宇宙の五行の気の流れを人体の中にも捉えたのが東洋医学です。

個人的にはこの感覚の的確さに驚くばかりで、あまりにすごすぎて、まさか古代には文明の進んだ宇宙人でもいたのかなと想像したりするのですが、何故なら例えば木、木とは大木や草を表しますが、木=肝は人体の中で主に解毒をする臓器です。森羅万象の中で木や草は大気の清浄を担っており、肝も人体の中で同じような役割をする臓器ですね。人体の中にも宇宙(自然界)における「木」があるではないかと考えた古代の方々、本当に天才だと思いませんか?

「火」とは燃えさかる炎だったり太陽だったりを表しますが、火の臓器である心は血を循環させる臓器です。血を循環させる事で身体を温め、まさに心は身体の中の君主(帝王)、太陽です。

このように古代の人は、自然界の大宇宙に対して、人体を小宇宙に例え、「天人合一」(てんじんごういつ)・・・天(自然や大宇宙)と人(小宇宙)は合一(一つである、切っても切り離せない)と表現しました。

この天人合一思想は陰陽五行思想とともに東洋医学の基本概念になっています。

五臓に対して六腑、木=胆のう、火=小腸、土=胃、金=大腸、水=膀胱、これに三焦を足して六腑と言い、五臓を陰の臓、六腑を陽の腑と呼び、五臓六腑を陰と陽の五行で表しました。

西洋医学と東洋医学

現代の西洋医学が「脳」を重視するのに対し、「人体とは五臓六腑が中心である」という考え方をするのが東洋医学の考え方です。

これもあながち間違ってはいないようです。

何故なら近年の科学技術の進歩により顕微鏡の精度が上がり、今までは見えなかったような体内の微量物質が捉えられるようになってきました。この事で、実は脳から出ている様々なホルモンは脳だけが司っているのではなく、臓器からも信号を送っている事が段々とわかってきました。例えば今まで長い間、小腸はブラックボックスと呼ばれ、消化を行う臓器である事はわかってはいたものの、正確に小腸で何が行われているのかよくわかっていませんでした。技術の進歩により微量物質が捉えられるようになってきた事で、セロトニンやオキシトシンなどの脳内物質が主に小腸内の細胞が代謝する際に作られ、この小腸で代謝された微量のホルモンが脳に影響を与えているという事がわかってきました。脳から臓器に指令を出しているのではなく(もちろん一方通行ではなく脳から臓器への指令も行われていますが)、むしろ元々はその逆、臓器→脳に信号を送っているのではないかという事ですね。

このようにまるで現代医学技術の進歩がむしろ古代の東洋医学の正しさを証明するかのように、五臓六腑が人体の中心であると言った古代人の的確さに驚くばかりです。

東洋医学的な診断と病気の考え方

五臓六腑を重要視する東洋医学では、身体の外からは見えない臓器の様子を外からでも判別できないかと考えました。昔はレントゲンなどという技術がなかったので、身体の外から五臓六腑の様子を判別するしか方法がなかったわけです。まさか人体を切ってみるわけにはいかなかったのです。

ですので体表や体臭の変化を感じ取り、身体に直接触ったりする事で判別を行っていました。これらを望診(ぼうしん)・聞診(ぶんしん)・問診(もんしん)・切診(せっしん)、総称して四診(ししん)と言い、東洋医学ではとても重要な診断方法です。

望診の際には身体の外に出ている器官を観察し、この体表に出ている器官を東洋医学では「出口器官」と呼んでいますが、見えない五臓六腑の様子を、対応する「出口器官」の変化で感じ取っていました。

例えば木=肝の出口器官は「目」。肝や胆のうに異常があると、そことつながっている出口器官である「目」に異常が出ると昔の人は考えました。確かにお酒を飲み過ぎたり、肝臓の数値に異常がある時、目が充血したりする事はありませんか?もちろんコンタクトや目の乾燥による充血もありますが、そうでないのに目の充血が続く時、肝の調子を疑ってみるのも良いと思います。身体はサインを出してくれているのですね。

白目の色が黄色くなってくるのは肝臓の悪いサインです。

また火=心の出口器官は「舌」。心臓病の方が持ち歩いているニトロベンという薬は心臓を急に動かす作用がある薬ですが、この薬は「舌下投与」します。舌と心臓に密接な関係がある事は東洋医学でも数千年前から言われています。

また土=脾臓、胃、胃が疲れてくると口の両脇にできものができますね。「口」は土の出口器官です。

食いしん坊の私は若い頃、調子に乗って食べ過ぎてよく口の両脇が切れたりしておりました(笑)

辛い物などの刺激物を食べ過ぎた時にも口の脇が切れたりしますね。これは胃が荒れているサインです。

コロナ禍で非常に驚いたのは金=肺と大腸。肺の炎症であるコロナにかかるとまず匂いがしなくなってくると言われてますね。まだコロナの流行の初期だったと思いますが、某野球選手が毎朝飲むコーヒーの匂いが感じなくなって不思議に思いクリニックを受診したらコロナだったという事があったのを覚えていますか?彼は「匂いがしなくなったらコロナに気を付けてください」という大事な事を世間に教えてくれましたが、まさに東洋医学で「鼻」は金=肺と大腸の出口器官です。新型コロナという現代の新しい感染症でさえ、東洋医学の基礎概念から外れていない事に非常に驚きました。

年を取るにつれてどうしても耳が悪くなります。耳鳴り、耳から来る目眩に悩まされる妙齢の女性は非常に多いですが、「耳」は水=腎の出口器官です。腎は東洋医学では「先天の精」とも呼ばれ、「先天の精」とは人が持って生まれた生命エネルギーを表しています。若い頃はこの生命エネルギーに満ちあふれ、この先天の生命エネルギーが加齢で少なくなってくると「耳」に症状が出るという訳です。医療機関で加齢ですから仕方ないと言われ、耳の不快な症状を諦めている方は多いですが、どこに行っても治らない耳鳴りや目眩の症状が、鍼灸治療で良くなるケースは当院でも非常に多いです。耳鳴りや目眩でお困りでしたら鍼灸院も選択肢に入れて一度訪れてみてはいかがでしょうか?

肝腎要(かんじんかなめ)という言葉がありますが、五臓六腑はどれも重要な臓器ですが、特に肝・腎・要(心)が大事であるという古代の人の言葉です。

時刻の図を見ていただけるとわかるように、腎=水の時刻は21時~深夜1時、肝=木の時刻は午前3時~7時、この時間に人体の対応する臓器が活発に働くと言われています。ですから体内の水分のクリーニングは深夜に、食べ物の解毒は明け方に行われる事になります。寝る3時間前には食べない方が良いというのは、深夜に消化に負担をかけると大事な肝や腎の働きが鈍くなってしまうからでもあるのだと思います。

冬には尿意が近くなるように、水=腎=冬、対応する季節にその臓器が活発に働くとも言われています。

またその季節にはその季節に対応する臓器をしっかり養生すると次の季節が元気に過ごせるとも言われており、冬は腎の養生、春は肝の養生、夏は心の養生、秋は肺の養生をすると、その次に巡る季節が元気に過ごせると言われています。

まもなく冬至を迎え、まさに陰極まる季節になりますが、冬は腎の養生、水分を取り過ぎない、また逆に取らなさ過ぎず、飲み物の温度にも気を付ける事が重要です。冬に冷たい物の取り過ぎる事は腎に影響しますので非常に注意が必要です。また土が水を剋しますが、土=甘い物の取り過ぎは腎を傷めます。白米ばかり食べるような食生活や甘い御菓子の取り過ぎは、特に冬場にはくれぐれも注意しましょう。

色彩も五行に分けられ、五行では水(=腎)は、黒や藍色を表します。これは食べ物の色と密接な関係があると言われ、腎の養生には黒い食べ物や冬に旬を迎えるものが良いと言われています。冬には黒ごまや黒豆、お米を黒米にする、ひじきなどの海藻類などを積極的に取るようにすると良いようです。

昔から白髪が多くなったり髪が薄くなった時に海藻を食べると良いと言われますが、まさに髪は腎と密接なつながりがあります。最近急に髪の変化が気になる・・・という方は腎が弱くなってきた証かもしれません。

身体を冷やさないよう、黒いものをしっかり食べて腎の養生をする、そして鍼灸治療に通う(!)、こんな事も髪のトラブル対策になるかもしれません。

今日は陰陽五行思想と東洋医学について記事にしてみました。

セドナグループでは(コロナ禍でここのところ少しお休みしていますが)定期的に陰陽五行セミナーも開催しています。ご興味があればそちらもご参加いただけると幸いです。

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